毎日のように全国で熊の出没と熊による被害が出ております。今や熊は社会問題。恐怖を感じて日々お過ごしの方も多いのではないでしょうか。
本来、ツキノワグマは人を襲うような動物ではありませんでした。私も約30年の山菜採り・きのこ採りで何度も熊に遭遇しておりますが、基本的には静かにしていればどこかへ去っていきます。
(ただし、親子連れの熊は別です。また、人里に下りてきた熊も精神状態が通常ではないため、狂暴化してもおかしくありません。)
最も恐れるべきは『人喰い熊の完成』
鋭い爪、大きな牙、強靭な肉体を持つ熊。最も恐れるべきは、人喰い熊の完成です。
現状の流れを見ると、人を餌と認識して襲う熊が多数出てしまうのではないかといったことが懸念されます。
わずか数日で7人が亡くなり、3人が重軽傷を負った「三毛別羆事件」をご存じの方も多いでしょう。1915年に北海道で発生したあまりにも悲惨な熊害事件です。
また、「OSO18」による家畜被害は記憶に新しいかと思います。OSO18は家畜(乳牛)を、三毛別羆事件は人を餌と認識した熊による被害です。
この記事で指す「人喰い熊」は、人を餌と認識した熊です。熊を「人喰い熊」にしないために、二人目の被害者を生まないために、できる対策を考えてみました。
人喰い熊が出来上がる過程
そもそも熊は雑食と言われますが、熊の種類と住んでいる地域、個体差が大きいです。
本来、ツキノワグマはかなり草食に近い熊で、木の実やタケノコなどを好んで食べます。ヒグマは草食傾向が強いものの、ツキノワグマよりは肉食寄りと言えるでしょう。
肉を主食としない熊なはずなのに、人喰い熊が完成してしまう流れには、いくつかのパターンが考えられます。
人間の狩った動物を食べて肉食傾向になる
鹿やイノシシなどの野生鳥獣を捕獲するため、古くから「くくり罠」といった道具が使われています。野生鳥獣の足や胴体をワイヤーの輪でくくり、捕獲する仕組みの罠です。
有害駆除(畑などを荒らされる被害を防ぐため)の鹿のくくり罠が多い環境で、猟師によるくくり罠の点検が遅れた時、捕獲された鹿を熊が先に見つけて襲って食べるケースがあります。
これを何度か繰り返してしまうと、木の実を食べていた熊も段々と肉食化してしまう可能性があります。
山に餌が少ない状態
まさに今年がそうですが、山に熊の餌がない状態でも、人喰い熊が出来上がってしまう可能性があります。
餌がなく空腹の状態が続いていると、熊もイライラします。
イライラした熊は常軌を逸した状態で、人を怖がらずに襲ってしまっても不思議ではありません。
たまたま人を襲い血を舐めてしまい餌と認識した
人を恐れない熊も増えている傾向がありますが、人(熊から見たら得体の知れない生き物)に突然遭遇してしまって襲う・・・という熊もいます。
子連れの熊が多いですが、子どもを守るために人を襲った熊がたまたま人の血を舐め(嚙みついたときなど)、人を餌と認識してしまうパターンもあります。
餌にする為に連れ去る
お腹が減っている、または、鹿などを食べて肉を「食べれるもの・美味しいもの」と認識している熊が、餌にするために人を連れ去る可能性もあります。
連れ去り事件については、10月中に岩手で2件、宮城でも1件起きています。
16日には岩手県北上市の温泉で従業員が熊によって連れ去られた被害がありました。(現在はご遺体が発見され、襲ったとされる熊は駆除されています。)
25日には、宮城県大崎市の民家で熊が柴犬をくわえて森に逃げるところが目撃されています。翌26日には、岩手県住田町の住宅敷地内で飼われていた柴犬が熊に引きずられて姿を消しました。
連れ去り後、土まんじゅうにして毎日食べる・・・といった行動に出る可能性があります。
熊が獲物を隠す際に、土や枝などをかぶせて作った盛り上がりを指します。熊は鹿などの餌を一度で食べきれない場合、土の中に隠す習性があります。
三毛別羆事件でも、土まんじゅうを作ろうとしたと思われる(このときは土ではなく、雪に人を隠そうとした)行動がみられました。
また、10月19日に北海道の砂川市では、道路に面した畑に居座る子熊と、そのそばに土まんじゅう(鹿を隠したもの)も見つかっています。(子熊は花火で追い払われ、土まんじゅうは撤去されました。)
土まんじゅうで数日の間お腹を満たした熊は「良い経験」として記憶。これを繰り返すことが考えられます。
同時多発的に起こってもおかしくない
本来人を餌と認識していない熊たちが、人を餌と思い人喰い熊になるのは、全国あちらこちらで一斉に起こってもおかしくありません。
なぜかというと、人食い熊が完成する過程は様々なパターンがあるからです。
人を餌と認識した熊の学習行動
何らかの理由で、人を餌と認識した熊はどう行動するのでしょうか。
熊は賢い生き物です。また、これは人間でも同じですが、いちど良い体験をすると、それを繰り返します。(あそこのラーメン屋さんは美味しかったな。また食べに行こう…となるのと同じです。)
人食い熊と化してしまった個体が死ぬまで、人を狩って食べる行動を繰り返すでしょう。頻度の差はあれど、成功体験を繰り返します。
複数人が亡くなり、それが駆除されるまで続くのは目に見えています。(この成功体験を繰り返していたのが三毛別羆事件であり、OSO18です。)
また、2016年に秋田県で起きた「十和利山熊襲撃事件」からも、熊が人を餌と認識して何度も襲うことが分かります。(ただ、このとき人喰い熊となってしまった個体は複数いるとみられ、そのうち3頭ほどは駆除されたという情報がありません。そのため、この熊たちがまだ生きているとすれば、再び人を襲う危険性が高いです。)
二人目の被害者を出さないためには
いちど人を餌と認識した「人喰い熊」が完成していまった場合、二人目の被害者を出さないことが急務です。
もしも人が連れ去られ、餌として熊が管理しているような状態だとすれば、一人目のご遺体の回収時が捕殺のチャンスと言えるでしょう。
捜索時の作戦
人が熊に拐われた事案が発生したら、救助に向かう際に大量の鹿肉を用意します。
被害者がご無事で保護されたとしても、ご遺体となってしまっていたとしても、被害者を連れ帰る際に代わりに鹿肉を置いてきます。
この際に置く鹿肉は、決して「お腹を空かせている熊さん、餌をどうぞ」という意味ではありません。
人喰い熊が鹿肉を食べているところを狙い、捕殺します。
熊を殺すのは可愛そうなのか
熊は可愛いです。子熊のコロンとしたフォルム、少し跳ねるような走り方。子熊でも成獣でも、人間と同じように、必死に生きているのには変わりありません。そのため、「熊を殺すのは可愛そう」という声も分かります。
(熊に襲われ怪我をした経験のある私も、今でも熊をカッコいいと思いますし、可愛いと思います。)
ただ、熊は今や、人の生命を脅かしているのは事実です。人の命か、熊の命か、といった選択を迫られていると考えてもらえれば分かりやすいのではないでしょうか。
「熊を殺すな」「山へ返せ」は、熊が出没した地域で恐怖に怯えながら暮らす人や、実際に熊被害に遭った人たちに対して無責任な言葉ではないかと感じています。
(※もちろん、いろんな意見があるかと思いますし、「やっぱり熊は殺すべきではない」と考える方の意見を何としてでも変えようとは思っておりません。)
まとめ
まずは、人喰い熊を完成させない!もしも人の味を覚えた熊が発生してしまったら、二人目の被害者を出す前にとめる!といったことが大切だと思います。
これは行政が動かなければならない問題でもありますが、私たち市民、町民、村民にできるのは、熊から自分の身を守る対策を行うことです。
今や熊がどこにいても不思議ではありません。自分だけでなく、愛する子どもが、愛するパートナーが、愛する親が、熊に襲われる可能性があるのです。
熊に襲われないための対策法をまとめた記事もありますので、ぜひそちらもご覧ください。




