当サイトをご覧いただいているほとんどの方がご存知かと思いますが、今年(2023年)の9月29日に、私は熊と遭遇する事案がありました。
左腕を噛まれたことによる傷と鋭いツメによる引っかき傷を負いまして、みなさまには多大なるご心配をおかけしましたとともに、たくさんのご声援をいただきまして誠にありがとうございます。
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今回は、いつもより少し真面目に(?)、実際に熊と対峙した私が思う『熊と人』についてお話しさせていただければと思います。
熊も人も平等
熊の動画をアップしてから、いろいろな方にさまざまなお声をいただきました。
応援してくださる人もいれば、その逆の人もいることは当たり前だと思っています。どんな事実であれ、切り取り方や伝わり方の影響は大きいものです。
ただ、「熊の縄張りに、みだりに入ったから襲われた」といわれるのは、事実と異なります。
私が普段活動している岩手県の岩泉町を含む北上山系は、山林の割合が95%になります。
(岩泉町に限っていえば93%です)
ほとんどが“山”です。都会に暮らす方で「イメージが湧きづらい」と感じる方はテレビ朝日の『ポツンと一軒家』の空からの一面に山が広がる映像を思い浮かべていただけると分かりやすいかもしれないですね。
このようなところでは、山沿いは人よりも熊の数のほうが多い状態です。
熊はどこにでもいますし、人と共存しています。
熊の生息域と人の暮らしている地域が重なっていますし、きっちりと活動範囲が区切られているわけではないので、熊の生息域に入らない、熊の縄張りに入らない、といったことは正直難しいです。
山間地域にあっては、熊も人も平等に暮らしているのです。
熊は頭の良い生き物
熊の目撃情報が多い年になると、よく「熊のエサが減っている」「今年はドングリが凶作」などと言われます。
もちろん、気候条件によっては、熊のエサが少ない年もあります。凶作と豊作を繰り返しているのは、たとえば米などの作物でも同じですよね。
ただ、山にエサがないのであれば、前の冬にこんなにたくさんの子熊が生まれないのも事実です。
凶作のときに民家の近くのエサの味を熊が覚えます。
民家近くのエサには、人が畑で作った作物・穀物もあります。(代表的なものとしてはトウモロコシなどが挙げられますね)
熊は頭が良い動物ですので、「山にエサがあってもなくても、民家周辺のエサは美味しい」と学ぶのです。
そうやって学んだ熊は、これから毎年民家の近くにやってきます。
人の安全を確保するのが最優先
人里に(といっても岩泉は山そのものですが)美味しいものがあると知った熊が毎年来るーー。
東京であっても、今年は多摩地域・町田市などで熊の目撃情報が相次いでいます。
「アーバンベア(都市型クマ)」という言葉を最近耳にするようになりましたが、このようになった今、人の安全を確保するのが最優先だと思います。
たとえば、侵入経路に電気柵を用意するなどですね。
まずは人の安全を確保して、そのうえで熊との共存について話し合うべきと私は思っています。
そのくらい、東北の田舎を始めとして、全国での熊との問題は差し迫ったものとなっています。
熊は何も悪くない
私の身に起きた事件について「お腹を空かせた熊が人を襲った」と言われることもありますが、それは違います。
あの時の母熊は、子どもを守ろうという強い母性愛で私に向かってきたのです。
熊の立場からすれば「いきなり得体の知れない生き物に出会ってしまった!何をされるか分からない!子どもを守らなくては!」といったところでしょうか。
人の味を覚えて人を襲うようになった熊がまれにいるのも事実ですが、ほとんどの熊は人をエサと認識していません。
怖いからこそ、殺らなきゃ殺られると思うからこそ、人に牙を向くのです。(とはいえ、私たち“人”も熊を怖いと思っていますが・・)
親子熊と出会ってしまったことは、私のミスと思っています。
そんな経験をした私だからこそ、みなさんに身を守る方法をお伝えできるのではないかとも思います。
みなさまに伝えたいこと
正直なところ、今回の事件をただ「熊が可哀想」「田舎の話だから自分には関係ない」と片付けられてしまうのは不本意です。
幸いにも私は腕と足をケガしただけで済みましたが、この先、私のように熊の被害に遭われる人が少しでも減るようにと思っています。
私の事件やその後の私の対策を通して、熊に対する意識が変わったり、熊対策の方法を知っていただければ嬉しいです。
私は熊を愛し、山を愛し、自然を愛し、犬や猫を愛し、私の周りにいてくださるみなさまに感謝していて、それは今までも、これからも変わりません。
今後も元気に活動を続けていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
原生林の熊